ここは、立山カルデラ解説員の方からお寄せいただいた写真、便りを紹介するページです。


▼▼ 2012年6月27日におこなった、立山カルデラ解説員研修会の様子を投稿いただきました。

解説員の現地研修〜初夏の“新湯”
去る6月27日に、立山カルデラ最奥部にある“新湯”に行ってきました。
山岳ガイドの先導の下、総勢48人が約40分間、道なき道を歩き攀じ登った先に、立ち昇る湯気の間から乳青色に見える“新湯”の畔にたどり着きました。 
弥陀ケ原のカルデラ展望台や室堂山からの展望台から、立山カルデラを覗き込んだ際には、天候に恵まれれば誰でもこの神秘的な色を見ることができます。
(1)湯川の上流部(新湯への道)

 常願寺川の支流、湯川の奥にある滝谷の辺りから上流を眺めた様子です。
ここから左岸に取り付いて川に沿って歩き、新湯の少し下流から斜面を攀じ登ります。
 川には崩壊土砂や大きな岩が転がっていて荒れた形相を見せています。

(2)シラネアオイの群落

 道なき道を歩く行程は、なまった身体にはいささか難儀でしたが、沢山の高山植物が群れて咲き、私たちの心を和ませてくれました。
 その中から、主なものを何種類か紹介します。

(3)シラネアオイ

  
(4)ニリンソウ

  
(5)キヌガサソウ

  
(6)サンカヨウ 

  
(7)湯気が立ち昇る“新湯”

 “新湯”は、約4万年前以降の火山活動の際に水蒸気爆発で出来た火口に水が溜まり、その後、1858年の安政飛越地震の際に熱湯に変わったといわれています。
標高1626mの場所にあり、最大水深は5m、直径30mのすりばち状の池です。

(8)カルデラ内で唯一の熱湯

 カルデラ内には、「どじょう池」「多枝原池」「刈込池」「新湯」の四つの池がありますが、最も小さくて唯一熱湯が沸いています。
約70℃の熱湯があふれ出て、脇を流れる湯川に滝のように流れ落ちていきます。この温度では、さすがに手をつけてみる勇気が出てきません。

                          ( ※新湯は体験学習会の見学ポイントには含まれていません。)


「解説員の現地研修〜白岩砂防堰堤の補強工事」
去る6月27日に、解説員の現地研修で、24年度体験学習会(トロッココース)の見学ポイントに新たに加わった「白岩砂防ダム右岸岩盤補強工事」の現場を見てきました。
(1)白岩砂防堰堤の全景

 立山カルデラ内にある砂防堰堤群の基幹施設として、1939年に完成した白岩砂防堰堤を左岸下流の上部からみた全景です。
  2009年6月に、砂防施設としては初めて国の重要文化財に指定されました。
  この堰堤を支える右岸岩盤(赤枠内:ダムの左側に白く見える岩肌)は花崗岩ですが長年の風雪にさらされて、さらに風化が進むと崩落の恐れが出てきたことから、1998年より2005年にかけて補強工事が行なわれました。

(2)水谷平への通路

 砂防工事の前線基地や宿舎・トロッコの終点などがある水谷平とカルデラ内をつなぐ、唯一の連絡トンネル(いま工事用車両が出てくるところ)の左に補強工事用トンネルが見える。 











         (1)写真の赤矢印の方向から撮影→

(3)補強工事用トンネル(入り口)

 補強工事用のトンネルは、1号2号と二つありますが、体験学習会で見学できるのは、この1号トンネルだけです。

  

(4)補強工事用トンネル(内部)

 トンネル内部の壁一面に、固定されたアンカーヘッドとケーブルボルトが見えます。

(5)アンカーヘッド・ケーブルボルト 1

 壁から角のように突き出たヘッドやボルトの先(中)には、1号、2号のトンネル合わせて889本のワイヤーが、脆い岩盤を締め付けたり引き止めたりして補強しています。

(6)アンカーヘッド・ケーブルボルト 2

 日光・華厳の滝の岩盤補強工事で、わが国で初めて行なわれた「ロックアンカー工法」が、ここでも取り入れられました。

(7)天涯の湯(足湯)

 体験学習会の参加者に人気の「天涯の湯」の足湯で、今日の足の疲れを癒しました。

 

                                                                     (A. H.)


▼▼ 2007年6月13日におこなった、立山カルデラ解説員研修会の様子を投稿いただきました。

新設の「健脚白岩コース」を歩いて
2007年度より、従来の「健脚多枝原コース」に加えて、立山カルデラの核心部である白岩砂防えん堤を間近に見学する「健脚白岩コース」が加わりました。
今年度の見学会開始に先立ち、解説員で現地のコースを歩き、ポイントなどを確認しました。
(1)湯川の噴泉

  「健脚多枝原コース」の目玉の一つがこの噴泉です。立山温泉跡地から湯川の河原へ降りた場所に噴出していますが、温度は約86度(気温19.6℃の時に噴出口で測定)もあって、立山火山活動の名残りを目の当たりにすることができます。
湯川の噴泉
(2)「護天涯」の碑

  天涯とは「天のはて、極めて遠く隔たったところ」という意味です。この碑は、富山平野の土砂災害を防ぐために人里を離れた立山カルデラを守ることは、あたかも地の果て天涯を守ることに通じる、という意味で使われており、大正4年、当時の浜口恒之助知事により刻まれたといわれています。
  泥谷上流1号えん堤に埋め込まれていて、「健脚多枝原コース」から見ることができます。  
護天涯の碑
(3)白岩砂防えん堤

  立山カルデラにおける土砂対策の根幹を担う重要な施設で、主ダム及び7つの副ダムを合わせた高さは108mで日本一を誇ります。平成11年「国登録有形文化財」に指定されました。
  これまで下流左岸上部の白岩下流展望台から見学していましたが、新設された「健脚白岩コース」では、えん堤真下からその威容を見ることができます。
  いまは、雪解け水を集めて水量豊かに流れています。
白岩砂防堰堤
(4)インクライン

  白岩砂防えん堤の附帯施設として昭和49年に竣工したもので、車両や資材の積載専用として使用されていました。
  高さは約85m、線路長217mあり、人は約420段の階段を降りることになり、慎重な行動が必要です。
インクライン
(5)山腹工の様子

  「山腹工」(さんぷくこう)とは、山腹の崩壊箇所の進行を抑えるため行われる工事のことで、画像の右側1/3ほどは工事が終わり、アンカーボルトの金属部分が光って見え、うっすらと植生の緑色が復元し始めています。左側の約2/3は白っぽく荒廃していて未着工で、その対比がよくわかります。
山腹工の様子
(6)留まる巨石

  カルデラ内の土石の流出エネルギーの大きさを物語っているようです。ダムの端から落ちそうでなかなか落ちないしぶとい様子に、参加者の中から“ど根性岩”と命名されました。
留まる巨石

▼▼ 2006年10月18日におこなった、立山カルデラ体験学習会トロッココースの様子を投稿いただきました。

紅葉の立山カルデラ
10/20をもって今年度の体験学習会も終わりましたが、さる10/18に、トロッココースでの体験学習会に解説員として参加してきましたので、その時の様子などを少しお伝えします。

当日は、カルデラをとりまく山の稜線付近には雲がかかっていましたが、気持ちのよい晴天の下、参加者の皆さんも熱心に見学され、また、自然を満喫されていました。
(1)樺平スイッチバック

連続18段世界最多のスイッチバックにさしかかると、一様に下の線路を撮影しようとカメラの腕がのびてきます。
(2)紅葉の水谷平

終点の水谷平でトロッコを降りて、しばしの休憩となります。
この場所からは弥陀ケ原に連なる断崖に刻まれた柱状節理の岩肌、落差約60mの”天涯の滝”が眺められますが、この時期は紅葉が彩りを添えてくれます。
(3)白岩ダム下流展望台より

白岩砂防ダムの下流対岸、やや上方にある展望台は絶好のビューポイントです。
ダムとそれを支える岩盤、工事の前線基地である水谷平、凄惨な様相を見せる有峰二の谷・三の谷、そして彼方には鬼岳・獅子岳・鷲岳の稜線といつまで眺めても飽きません。
(4)“天涯の橋”

立山温泉跡地と泥鰌池の間を流れる湯川に架かる橋は鋼鉄製のつり橋で、河原よりの高さが10数mあり、ちょっとしたスリルを味わうことができます。
(5)“天涯の水”

立山カルデラ内には“天涯の○○”と名づけられた場所や施設がいくつかありますが、“天涯”とは、「天のはて、極めて遠く隔たったところ」という意味で、富山平野の土砂災害を防ぐために人里離れた立山カルデラで働く人々の苦労を称えることから使われじめた とのことです。
この場所は、調査のためボーリングしたところ、地下40mから涌きだしたもので、7℃、pH7.09の美味しい水です。
工事関係者の何よりの憩いの水で、我々もお相伴にあずかっています。


▼▼ 2006年6月28日におこなった、立山カルデラ解説員研修会の様子を投稿いただきました。

今年初めての立山初カルデラ
春先の大雪と低温で、除雪や安全確認が大幅に遅れて、立山カルデラ内の工事開始は、例年より約1ケ月遅れて、6月26日より本格的に始まった。

その2日後の28日に、今年度より見学コースが何箇所か変更になったので、その確認のため現地を訪れた。

出発時には空一面に青空が広がり、トロッコの窓から吹き込む初夏の爽風に心地良かったが、昼過ぎから天気が崩れはじめ、帰途につく頃から大きな雨となり、千寿ケ原に帰着して常願寺川をのぞいたら、濁流が流れていてあらためて自然の凄さを感じた。
(1)工事用トロッコ

見学会は、トロッコ・バス個人・バス団体・健脚などのコースがあるが、何といっても人気ナンバー・ワンはトロッココースである。

しかし、現地は地形も険しい工事現場の真っ只中で、天候により時には中止になるのが悩みの種。

写真は、コース中唯一の下車可能地点で解説員の皆さんが思い思いに撮影している様子。
(2)「平成の崩れ」

鍬崎山から北東方向に派生する支稜が常願寺川に落ちるあたり、トロッコの車窓に生々しい風景が広がる。

平成12年に崩壊が始まったが、毎年ここを通過するたびに落ちそうでなかなか落ちない巨岩が気になっていたが、意外に安定していてそのうちに下部に緑が生えだしたので、まだまだ当分は持ちそうである。
(3)樺平スイッチバック

トロッコ・コースの人気の一つに全部で8ケ所、38段の世界最多のスイッチバックがあるが、トロッコが前進・後退するたびにポイントの切り替えが必要である。

ところが、この冬の大雪は沿線の送電線鉄塔をも破壊したため、現在は電気が通ぜず、車掌が手動で転轍機を動かすのに大忙し。

ここ樺平スイッチバックは連続18段もあるため、さすがに自家発電機を設置して対応していた。
(4)有峰二の谷・三の谷

名前が「有峰」だが、有峰湖のある場所からは遠く離れて、水谷平のすぐ上流にある地点。

目の前に崩壊土砂が剥き出していささか凄惨な眺めで、「阿波の土柱」にも似た光景が広がっている。
(5)「天涯の滝」

トロッコの発着点である水谷平に来ると、見学者の皆が一様にカメラを向ける滝である。弥陀ケ原の松尾峠手前すぐ右下から続く水谷の途中に懸る落差約60mの滝で「水谷の滝」が正式名称。

周辺には、立山火山第1期の活動によってできた柱状節理が見事である。
(6)作業員宿舎

立山砂防の拠点・水谷平には、6月〜10月の間には約250人の工事関係者が泊り込みで働いておられるが、この大雪の影響で組立式の宿舎も、まだ2〜3棟しか建っていなかった。